海外研究記

タタ基礎研究所 白石亮平 (博士前期2年)

2015年01月20日

2014年12月12日から12月31日の間、インドのムンバイにあるTIFR(Tata Institute of Fundamental Research)という研究施設で実験を行いました。この実験に参加することは、私の研究生活における大きな目標の1つと位置付けていましたので、飛行機を降りインドの地を踏みしめたとき、何とも言えない感慨深さを感じました。

ムンバイの気候は冬を感じさせない暖かさで、夜でもシャツ1枚で過ごすことができました。また研究所の敷地内には至る所に木々が生い茂っており、鳥や犬などの楽園となっていました。ゲストハウスに到着し自分の部屋で一息ついていると、ベランダがやけに騒がしいことに気が付きました。窓を開けると数羽のハトが慌てて一斉に逃げて行き、後には最近産んだらしい卵だけが取り残されていました。窓を閉めてしばらくすると再びハトが戻ってきて、昼夜構わず大合唱を行うため、それに慣れてぐっすり眠れるまでに2、3日を要しました。

今回の実験では様々な本数密度のSiナノロッドターゲットに高強度レーザーを照射し、それらの相互作用により発生する高速電子やX線の計測を行いました。実験中の雰囲気を一言で言えば「非常に賑やか」で、研究室の壁に備え付けられてあるホワイトボードを使って常に議論を交わしながら実験を進めました。研究室の方が私に呼びかけるときに”My friend!”という表現を使うのですが、普段聞きなれていないので、何だか嬉しくこそばゆい気持ちになったのを覚えています。やはり英語でのコミュニケーションには大変苦労し、言いたいことが上手く伝わらずに聞き返されることも多々ありました。しかし、「これは自分の実験だ」ということを意識して、積極的に議論に参加するように心がけました。レーザー装置のパワーサプライの故障を始め、様々なトラブルに見舞われましたが、最終的に多くのデータを取ることができ、実験を大成功に終わらせることができました。

実験が終わりインドを発つ日、自分の中の大きな目標を成し遂げたことによる達成感を感じたとともに、少し寂しさも感じました。ゲストハウスを去るときにふとベランダを見てみると、2週間前に発見した卵から孵化した子バトと目が合いました。それはもはやひな鳥とは呼べないほど大きくなっており、親鳥に頼らずに自分で餌を探せそうなくらい立派に成長していました。私は、そこにインドという国の生命力を垣間見たと同時に、無意識的にこの実験で大きく成長した自分自身の姿を重ね合わせていることに気が付きました。

海外で一人、日本語が全く通用しない環境に身を投じ実験を行うということは、おそらく今後の人生で二度と経験することはないと思います。このような非常に貴重な機会を与えてくださった先生方、TIFRの方々に深く感謝申し上げます。

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共同研究者らと実験の合間に(著者は左端)

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実験装置(真空チャンバー内)

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ゲストハウスのハト