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それでは具体的に核融合炉の開発はどこまで進んでいるのでしょうか?
トカマク方式の核融合炉開発では、日本のJT-60、欧州連合(EU)のJET、米のTFTRという世界三大大型トカマク装置において本格的な実験が行われ、世界最高データ樹立を競う形で進展してきました。その結果、現在核融合炉の最終目標より1つ下の条件(臨界プラズマ条件)に到達するところまできています。
そこで次の段階としていよいよ最終目標を達成するために、さらに大型のトカマク装置を開発する必要が出てきました。
国際熱核融合実験炉『ITER』は、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトです。
この計画は、2013年頃の完成を目指し、日本・欧州連合 (EU)・ロシアの三極により進められています。設計に基づく技術開発は各極が分担して行い、設計は国際チームが中心になって行っています。国際チームは、現在、茨城県那珂町にある日本原子力研究所・那珂研究所と、ドイツのミュンヘン郊外ガルヒングにあるマックスプランク・プラズマ物理研究所におかれています。
ITER計画の目標は、50万キロワットの核融合出力を長時間に渡って実現し、核融合エネルギーが科学・技術的に実現可能であることを実証することです。ITERは、将来の発電炉に不可欠な核融合プラズマ制御技術を実証し、加えてブランケット等の発電炉で必要となる炉工学技術の開発を行う装置です。したがって、この装置を安全に信頼性高く運転することで、将来の発電炉の技術的見通しを得ることができます。また、発電炉用の燃料(トリチウム)生産兼発電用ブランケットを並行して開発し、ITERを用いて試験し、将来の発電炉に備えます。
ITERで得られたデータは、核融合炉実現に向けて飛躍的な一歩になる可能性を秘めています!
4.国際熱核融合実験炉 (ITER;International Thermonuclear Experimental Reactor)
ダイバータ機器のおよその説明はわかりましたか?それでは、ダイバータ以外の対向機器について説明していきましょう。ダイバータ領域はトカマク型核融合炉の中ではほんの一部に過ぎません。実際の閉じ込め容器内でプラズマに面しているほとんどの部分は、第一壁と呼ばれる部分です。そのため第一壁は、炉心プラズマとは直接接触していなくても、その周辺のプラズマから放射熱、中性粒子(原子、分子)、荷電粒子(イオン、電子)、中性子といったものの入射にさらされる事になります。つまり第一壁は外側にあるブランケット(核融合炉からエネルギーを熱として取り出したり、燃料である3重水素:Tの増殖などを行う機器)や真空容器を保護する役割をもっています。それでは、プラズマから放出される熱や粒子が対向材料に入射すると、いったいどうなってしまうのでしょうか?主な現象について説明していきましょう。

損耗erosion
 まずプラズマにさらされる材料には損耗という現象が起きます。損耗とは対向材料がどんどん削れていってしまう事です。
 損耗の過程には、具体的に熱によるものと粒子によるものとがあります。

 
熱によるもの)
プラズマからの放射熱やイオン、電子が入射すると対向材料の表面温度はどんどん上がっていきます。材料には融点が存在しますので、その 温度に達した材料からは、材料原子が外へと飛び出してしまいます。そのため、対向材料の温度が高くなる状況(ダイバータ等)では、熱による損耗を考慮にいれなくてはなりません。

 
粒子によるもの)
イオンや中性粒子はエネルギーをもって材料に入射します。エネルギーとは粒子がどれだけ勢いよく入射したかという事ですので、その入射に より対向材料表面の材料原子は、玉突きのようにはじき出されてしまいます。

吸蔵retention
 入射する粒子は対向材料表面の原子をはじき出すだけではなく、材料の中にももぐりこみます。つまり対向材料中には、入射した粒子が閉じ込められた様な状態になります。この現象を吸蔵といいます。吸蔵された粒子は、材料の温度が上がる事で再び材料の外へ放出されます。

堆積deposition
 入射によってはじき出された材料原子はどこへいくのでしょうか?材料原子がはじき出されるとその外側、つまりプラズマ中へ放出されます。そこでは材料原子は不純物粒子として振る舞い、プラズマ中の粒子と共に材料へと再び入射されます。この不純物粒子もまた、損耗や吸蔵を起こしますが、材料表面に堆積して材料表面に不純物の層を形成する事もあります。

これらの現象は、プラズマ・壁相互作用と呼ばれています。プラズマ・壁相互作用の研究は、第一壁やダイバータといったプラズマ対向機器に使用される材料を選定する上で極めて重要になります。
我々の研究では、プラズマ・壁相互作用の研究を通して、第一壁に使われる候補材料について照射実験等を行い評価を行っています。
研究の詳しい内容はこちらへ→
核融合炉第一壁照射実験
3.第一壁とプラズマ・壁相互作用
 さて、図4の磁場配位を見ると、磁力線が下に向かって引き出されているのがわかります。これは、高温プラズマと真空容器の内壁が直接触プラズマによって削られてしまうのを防ぐ目的があります。高温プラズマと壁とが接触すると、壁がプラズマ粒子によって削られてしまいます。削られた壁材料がプラズマに混入すると、不純物としてプラズマを冷却してしまいます。
 そこで、補助コイルを用いて磁力線を引き出し、上図のような磁場配位を作り出す方法が考えられました。こうすれば、コアプラズマから漏れ出てきたイオンのほとんどは、磁力線に沿って、ある領域(上図のダイバータ領域と書かれているところです)に運ばれるため、プラズマの密度や温度は壁付近で急激に減少します。つまり、本来壁全体に散らばるはずだったプラズマ粒子を、一箇所に集中させることで、対向壁の損耗とそれに伴う不純物の混入を低減させるわけです。この結果出来上がった、図4のような磁場配位をダイバータ配位と呼びます。

 しかし、このときダイバータ領域は非常に高い熱負荷・粒子負荷にさらされることになります。よってこれを受け止める対向材料(ダイバータ板)の選定・開発は、核融合炉にとっての最重要テーマのひとつになります。
ダイバータ配位によって低減しているとはいっても、壁からの不純物は完全には無くなりません。それにプラズマには核融合反応で生じたヘリウム灰や未反応燃料粒子などがどんどんたまってしまいます。これらプラズマに溜まる不純物などは、取り除かなければいけません。
そこでダイバータには、磁力線に沿って運ばれてくる燃料イオンや不純物イオンを排気する役割ももっています。不純物などのイオンをはダイバータ板に衝突して表面で再結合し、中性の原子・分子に変換され、その後、真空ポンプで排気されます。
ダイバータは、プラズマをきれいに保つために必要な部分なわけですね。
 我々の研究では、このダイバータ部付近に使われる対向材料の選定に必要な基礎研究を通して、ダイバータシステムそのものの開発等を行っています。研究の詳しい内容などはこちらへ→ぺブルダイバータシステムの研究

2.ダイバータ
図3 トカマクの磁場配位
こうすれば荷電粒子は磁力線に沿ってぐるぐると回り続け、いつまでも同じところに留まってくれます。これがトカマクの根本となる概念であり、トカマクの真空容器がドーナツ状になっているのもここに理由があるのです。ただし、実際はこのような円形磁場だけではプラズマは閉じこもってくれず、さらに色々な工夫をこらす必要があります。最終的にできあがる磁場配位は下のようになります。
図2 円形磁場にまきつく荷電粒子
この性質を利用してプラズマを閉じ込めるわけです。しかし、これだけでは荷電粒子は磁力線に沿ってどんどん遠くへ行ってしまうだけで、閉じ込めも何もありません。そこで、トカマクでは下のように、磁力線をぐるっと一周させて、閉じた形にしています。
図1 ラーマ運動
 さて、話の本筋に入る前に、プラズマが荷電粒子の集合体であることを思い出してください。磁場中にいる荷電粒子は、磁場から力を受けて運動します。いわゆるローレンツ力ですね。この結果、荷電粒子は磁力線に巻きつくように運動します。(これをラーマ運動といいます)
1.トカマクの原理
 さて、前節『核融合って何?』で述べたように、ひとくちに核融合といっても様々な種類があります。その中で、最も実用化に近いと言われているのがトカマク方式であり、現在計画中の国際熱核融合実験炉ITERもこの方式を採用することが決まっています。そして我々の研究もこのトカマク方式を前提にしています。この節では、トカマク方式の概念、特徴について簡単に触れてみたいと思います。
トカマクって何?
なっとく!核融合−A
核融合反応の実現には高温高密度プラズマを利用することを前にのべましたが、ここではプラズマが何であるか!について説明します。温度が上昇すると、物質は固体から液体に、液体から気体にと状態が変化します。気体の温度が上昇すると気体の分子は原子に分割されます(解離)。さらに温度を上げていくと原子核の周りを回っていた電子がはぎとられて、正の電気を帯びたイオンと、はぎとられた電子とになります(電離)。これらに加えて気体の原子や分子とがごっちゃになって存在している状態をプラズマとよびです。
自然界には,地球のエネルギーの源である太陽,それから吹き出す太陽風,地球を取り巻く電離層,極地の空を彩るオーロラ,真夏の積乱雲から走る稲妻等,様々な形のプラズマが存在しています。また夜空にちりばめられた数々の恒星に加えて,星と星の間の空間にも希薄なプラズマがひろがっており,宇宙全体で考えると、固体・液体・気体に比べてプラズマの占める部分の体積は圧倒的に大きく宇宙を構成する物質の98%以上がプラズマであるといわれています。概念図を書いてみると下の様な感じになります。
5.プラズマとは何か?
先ほどの話の中で閉じ込めについて出てきましたが、太陽ではその莫大な質量から生み出される重力によってプラズマを閉じ込めていますが、地上で核融合反応を起こそうとするとそれなりに工夫が必要となってきます。というのも高温(約1億度)高密度のプラズマでは入れておく容器の材料は全て溶けてしまいます。地球上で重力で閉じ込めようとすると太陽と同じだけの質量が要りますが、これは不可能な話です。
そこで、高温の原子を容器の壁に触れることなく閉じ込めるために2つの方法が主に考えられています。

まず1つ目として、磁力線による「カゴ」をつくってその中にプラズマを外に漏れないようにする、
磁場閉じ込め方式という方法があります。(詳細は次節説明)その中でもトカマク方式は最もよく知られています。・・・日本原子力研究所

次に2つ目として、四方八方から
レーザービーム(他に、電子ビーム、軽イオンビーム、重イオンビーム等など)を当て、燃料を圧縮させることで高い密度をつくり出し反応を起こさせる方法です。これは慣性閉じ込め方式と呼ばれています。・・・大阪大学レーザー核融合研究センター

日本原子力研究所では、JT‐60と呼ばれる大型トカマク装置を用いて世界最高のプラズマ性能を達成するなど、核融合炉の実現に向けて着々と研究は進められています。
4.どのように閉じ込めますか?
原子核どうしをぶつけあって融合反応をおこさせることは、実は容易なことではありません。というのも原子核はプラス(正)の電荷を持っているので、ただ近づけただけでは互いに反発しあうため、なかなか衝突してくれません。この反発する力に打ち勝ってぶつかり合うためには原子核に速いスピードを与えなければなりません。そのためには高い温度が必要になってきます。核融合では最低でも1億度の高温が必要とされています。このような超高温ではすべての物質はプラズマという状態になっています。プラズマについては、後で触れます。
その他にも効率良くエネルギーを発生させるためには温度以外に次のような2つの大きなポイントがあります。
T.
密度を高める。
       原子をたくさん入れておけばそれだけ衝突する確率は上がるので核融合反応は起こりやすくなります。
U.
閉じ込め時間を長くする。
       原子を長い時間、一緒に閉じ込めておけばそれだけ衝突をおこす確率が上がります。

上の条件をまとめると原子たちを
高温高密度プラズマにしてある有限領域で反応をおこさせると、たくさん反応が起こってより多くのエネルギーを得ることができます。

太陽の中心核では、水素をヘリウムに変換する核融合反応が行われています。具体的には水素原子4個が合体してヘリウム原子に変わっています。
3.どのようにすれば核融合をおこせる?
科学技術の進歩とともに、人類はとても快適な生活を手に入れましたが、その裏で傷ついていていたのが地球なのです。20世紀の人類はそのことに真剣に向き合わずに活動を続けていたので、環境破壊によって地球はかつて無いほどの危険に見舞われています。この問題を避けて地球の未来は語れません。
また、全世界でのエネルギー消費量というのは年々多くなってきています。もしもこのまま人類がエネルギー源を石油や石炭などの化石燃料にたより続ければ大気汚染や地球温暖化現象の進行が、また原子力発電では廃棄物による放射能汚染が懸念されます。
そこで核融合の出番です。これは、燃料となる水素は海の中にたっぷりあり、少なくともあと数千年は大丈夫です。使用済みの廃棄物も少ないのが核融合炉の特徴です。
2.核融合が今必要なワケ
酸素のない宇宙空間で太陽が燃える理由もこの原理によるものです。現在、地球にはさまざまなエネルギーがあります。それらと比べて太陽エネルギーの優れている点は、まず第一に地球環境に与える影響がほとんどないことです(ただし、太陽電池等の製作時の影響は考慮していない)。
簡単に説明すると、水素のような軽い原子がもう1つの水素の原子とぶつかって1個のもう少し重たい原子ができる反応を核融合反応といいます。またこのとき1つになった原子はごくわずかな質量を失う代わりに、非常に大きなエネルギーを生み出します。ここで、軽い元素の例として水素を挙げましたが実は水素は1種類だけではありません。何を言っているかというと、水素には原子核の中に中性子呼ばれる核子が無いものと1つ含むものと2つ含むものが存在していて、ごく一般に水素と呼ばれているものは中性子を含まない陽子1つでけの軽水素と呼ばれるものです。しかし核融合反応、とりわけ地上で起こす場合には軽水素を燃料としても使うよりも中性子を1個含む重水素(D:デュートリウム)と2個含む三重水素(T:トリチウム)と呼ばれる水素の仲間たちの方がいいのです。
1.核融合反応とは
私たちの住む地球は無限のエネルギーを降り注ぐ恒星である「太陽」の恵みを約46億年の長きに渡って受けてきました。

ではこの太陽はどうして輝き続け、どうして燃え尽きてしまわないのでしょうか?

その答えが太陽内部で起こっている「核融合反応」なのです。
核融合って何?